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【邦画】白ゆき姫殺人事件ネタバレ・感想

白ゆき姫殺人事件  Blu-ray

ずっと見たいなーと思っていた湊かなえさん原作の『白ゆき姫殺人事件』が、ひかりTVの日曜邦画劇場にて放送されていました!

原作もまだ読んでいないので、どんな話なのかまたどんな結末になるのか最後までハラハラしながら見ることができました。個人的にちょー面白かったのでレビューを書いていこうと思います。

 

いつものごとくネタバレありの記事になりますので、ネタバレ回避したい方はご注意下さい。

あらすじ

人里離れた山中で10か所以上を刺され、焼かれた死体が発見される。殺害されたのは典子(菜々緒)で、容疑者は化粧品会社のOL城野美姫(井上真央)。テレビディレクターの赤星雄治(綾野剛)は、美姫の同僚、家族、幼なじみなどに取材。典子が美姫の同期入社で、美人で評判だった一方、美姫は地味で目立たない存在だったことが報道され……。                     シネマトゥデイ様より引用

 

登場人物

城野美姫(井上真央)

この殺人事件の犯人とされる女性。日の出化粧品勤務のOL。事件の夜被害者を車に乗せるところや、駅のホームにかばんを抱えて猛ダッシュするところを目撃されており、事件発生の翌日から行方が分からなくなっていることから容疑者とされている。

大人しく目立たない人物で、学生時代の同級生からは不気味な存在だと思われている。小学校の時に、『呪いの儀式』をやって裏山を燃やしたことがあったりと、近所からもあまり評判はよくないようだ。

 

三木典子(菜々緒)

容疑者の城野と同じく日の出化粧品で働く美人OL。城野とは同期入社だが、地味な城野とは対照的にその美しい見た目から男性社員はもちろん、女性社員からも好かれていたとされている。

この殺人事件の被害者で、事件現場となったしぐれ谷で全身メッタ刺しの挙句焼死体となって発見される。

 

赤星雄治(綾野剛)

映像制作会社の契約社員。ことあるごとにtwitterに日常の出来事などをつぶやき、その内容はおもに食べたラーメンの評価。いわゆる『バカッター』でつぶやいていいことといけないことの区別があまりつかない。

さえない契約社員だったが、同級生から白ゆき姫殺人事件の犯人をしっていると電話があり取材して番組を作り上げ評価される。最初から城野美姫が怪しいとにらんでおり、確定していないのに城野が犯人であるかのような番組を作り上げる。

 

狩野 里沙子( 蓮沸美沙子)

日の出化粧品のOLで、赤星に連絡してきた同級生。殺された三木典子とは会社のパートナー制度でパートナーとなっており、先輩としてそしてパートナーとして三木典子のことを慕っていた。

会社で立て続けに起こっていた盗難事件の犯人も城野美姫ではないかと疑っており、城野と付き合っていた篠山聡史を三木典子に取られた恨みから犯行に至ったのでは?と推測している。

 

篠山 聡史(金子ノブアキ)

日の出化粧品の係長で、城野美姫と付き合っていたとされる人物。しかし取材してみると篠山本人は城野とは付き合っておらず、自分が付き合っていたのは三木典子だと主張する。

城野は自分の体調を心配してお弁当を作ってきてくれたが、次第にその行為がエスカレートし、休日自分が不在の時に郵便ポストにお惣菜が入っていたことに背筋凍る思いをしたと言う。

 

満島 栄美(小野恵令奈)

里沙子の同期でゴシップ好きなOL。容疑者とされる城野美姫とパートナーを組んでおり、正直城野にはいい印象を抱いていない様子。城野と係長が付き合っているのでは?というのも彼女の情報で、二人が同じお弁当を食べていたのを見たと言っている。

 

前谷 みのり(谷村美月)

美姫の大学時代の親友で、赤星が作った番組をみてテンちゃん(美姫のあだ名)はそんなことをする人物ではないとTV局に抗議文を送りつける。番組内のインタビューで城野と付き合っていないと証言していた係長についても、テンちゃんから係長の性癖についても聞いているのであの男は嘘つきだと厳しく批判している。

しかし彼女を庇うあまり、赤星のツイッター上での発言のリプライに今までイニシャルでしか語られていなかった加害者Sの本名を出してしまいそれが拡散されてしまう。

 

谷村 夕子(貫地谷しほり)

美姫の小学校からの幼馴染で、その村一番の美人。しかし転校生により夕子という名前を「タコ」と呼ばれるようになってしまい、先生からもタコちゃんなどと呼ばれ不登校気味になってしまうが、美姫だけは味方でいてくれた。

twitter上で無責任な発言を繰り返す赤星に「呪う」など過激なリプを飛ばすものの、それは全て美姫を思ってのことだった。

 

ネット・報道の怖さ

この作品を見て一番感じたことはネットの怖さです。twitterで何気なくつぶやいたことがどんどん拡散され、噂には尾ひれがついていく。報道に関してもそうです。報道されたことが、まるで全て真実かのように視聴者には写ってしまう。

 

何を信じればいいのか分からなくなります。

 

登場人物ほぼ嘘つき

ネットや報道も去ることながら、女のドロドロとした怖さも垣間見えます。じつは先ほど登場人物で紹介した女性、実はほとんどの女性が赤星の取材に対して嘘の発言をしています。

例えば里沙子。彼女は被害者である典子のことを完璧な女性であるかのように語っていましたが、実はそうではありませんでした。典子は典型的な女性に嫌われるタイプの美人で、常に自分が1番でないと気に食わないタイプの人間でした。

 

そして篠山係長。彼も大嘘つきです。容疑者美姫とは、美姫に一方的に思いを寄せられていただけだと証言していましたが実はそうではありませんでした。忙しくて体調を崩した篠山を心配してお弁当を作ってきたのは事実でした。

しかしその後また作ってくれとノリノリでお願いしたのは篠山の方ですし、不在時にお惣菜が入れてあった件だって「来たなら何で言ってくれないの?」と誘ったのも篠山でした。こんな奴に美姫は大切にとっておいた初めてをあげちゃうんですよねー。

 

1番許せなかったのは大学時代の親友みのり!こいつは美姫を庇うような発言をしながらtwitter上に美姫の本名を流出させたり、抗議文でありもしない美姫と篠山の変態プレイ(篠山は足の中指と薬指の間を舐められるのが好き)を暴露したりとやりたい放題!

自分より地味で天然記念物のようだったテンちゃんに、先を越された(男と女のアレの)のがよっぽど悔しかったと見えます。嫌な奴。

 

美姫の告白

この物語ははじめはそれぞれの登場人物が事件について、そして美姫、典子の人物像について語っていきます。そして真実を美姫がラストに語るいわゆる羅生門形式をとっています。

それぞれの証言から導き出された美姫の人物像は、暗くて地味で呪いの儀式なんかやっちゃうちょっと不気味な女性です。

一方被害者である典子は美人というだけで世間の同情を余計に買っています。里沙子の証言などからも、地味な美姫が美人で完璧な典子に恋人を奪われたことを恨んでの犯行といった構図がどんどん出来上がっていきます。

 

しかし真実は全く違いました。

典子は先ほども少し書きましたが典型的な嫌な女。入社の挨拶で同期入社の美姫のことを「お城の中にいる美しいお姫様の城野美姫さんには名前では負けちゃってますが、仕事では負けないように頑張りたいと思います」と揶揄するような言い方をしています。

そして美姫に彼氏が出来れば彼氏を奪うなど、美姫から全てを奪って絶望させようとします。しかし美姫は大好きな『芹沢ブラザーズ』のCDを聞いて心を落ち着け、いつしか芹沢ブラザーズだけが美姫の心のよりどころになっていきます。しかし典子はその唯一の心のより所までをも奪っていきます。

 

急に芹沢ブラザーズのファンと言い出し、雅也というメンバーと付き合っていると言うではありませんか!これには美姫もショックを受けます。実はこの『芹沢ブラザーズ』がこの事件の発端とも言っていいほど重要なキーワードなのです。

 

犯人は本当に美姫なのか!?

 

答えはNOです。本当に意外な人物が犯人です。まずこの事件の一連の美姫の不審な行動について振り返ります。事件があった夜は先輩社員の送別会でした。城野美姫と三木典子は1次会で帰りますが、歩いて帰宅していた典子を美姫が車に乗せる所を目撃されています。その後大きな荷物を抱え一目散に駅へと全速力で走っていく所を目撃され、それから行方がわからなくなっているため美姫には疑いがかけられていました。

 

真実はこうです。

この夜はあの芹沢ブラザーズのライブがありました。コンサートやライブなど滅多に行わないため絶対に行きたかった美姫ですが、チケットを取ることが出来ませんでした。そんな美姫に典子は「チケットが1枚あるんだけど、体調が悪いから代わりに行かない?」と声をかけます。

美姫は喜び、東京までの電車の時間などを調べ泊まりの準備をして大きな荷物を抱えて出勤します。しかし当日の朝ロッカーで「やっぱり体調が良くなったから行こうと思うの」と典子が言い出したのです。期待させておいて一気にどん底に突き落とされた美姫は、思わず給湯室で泣いてしまいます。そこに声をかけてきたのが里沙子でした

 

里沙子は「私もパートナーだから色々あるんです。私でよかったら何でも話してください」と美姫から事の顛末を聞きだします。そして「そのライブ、城野さんが行っちゃいましょう」ととんでもない提案をするのでした。

 

計画はまず里沙子が体調が悪いという典子に、眠気が強く出る風邪薬をどうぞといって飲ませます。そして夜の送別会でお酒をたくさん飲ませ、典子が眠ってしまった隙にバッグからチケットを奪って美姫が行くというものでした。しかしそう簡単にはうまくいかず、帰り道の社中で典子はなかなか眠ってはくれませんでした。仕方なく時間を稼ぐため、特急券を忘れたと言い美姫は自宅に戻り部屋から駐車場に戻ってみると典子は眠ってしまっていました。

 

駅の近くのコインパーキングで最後までチケットを盗むことをためらっていた美姫ですが、どうしても行きたいという欲が勝ってしまいバッグからチケットを盗んで典子を放置したまま駅へと向かいます。荷物を抱えて駅まで猛ダッシュしてたのは、東京行きの電車の時間に遅れそうだったからでした。

 

そして無事?東京に着いた美姫でしたが、ここでもう1つの事件が起きてしまいます。初めて芹沢ブラザーズを目の前にして興奮し、握手を求める美姫でしたが、たくさんのファンに押され事故ではありますがメンバーの雅也を突き飛ばして大怪我をさせてしまいます。怖くなった美姫は次の日会社に嘘をついて仕事を休みますが、朝起きてテレビをつけてみると昨日一緒にいた典子が殺されたという事件が目に入ってきます。

 

そのうちには自分が犯人であるかのような報道が次々とされ、ついに美姫は自殺することを考えるのでした。

 

犯人と殺害の動機

自殺しようと首に紐をくくっている美姫の目に飛び込んできたニュースは、典子を殺した犯人が里沙子であるという報道でした。驚愕する美姫は自殺を踏みとどまります。

 

実は会社で起きていた一連の盗難事件の犯人は里沙子でした。最初は誰かのために残しておいたケーキを食べてしまったことから始まって、ついには会社の看板商品である『白ゆき石鹸』を1個2個、最終的には箱ごとかばんに押し込んで盗んでいたのです。

この盗難の犯人が里沙子であることに典子は気づいていました。いつ内部告発しようかと思っている典子に気づいた里沙子は、会社を首になるのは困ると思い典子の殺害を計画します。そんな時に目に入ったのが美姫でした。里沙子は美姫を利用して、典子を殺害することに決めました。

 

犯行当夜社内に放置されていた典子を、車を運転して現場となったしぐれ谷へと連れて行きます。目を覚まし異変に気づいた典子ですが、まだお酒と薬が残っているせいか足元もおぼつかず、里沙子にメッタ刺しにされてしまいます。それだけでは満足できなかった里沙子は、社内にあったBBQのときにつかった着火剤を典子にかけて遺体を燃やしてしまったのでした。

 

まとめ

最後まで犯人が誰だかわからない構成はとても素晴らしかったです。なんとなく美姫は犯人ではないんだろうな、と思ってみていましたがいかんせん行動が怪しすぎたので。しかしその怪しい行動もきちんと伏線を回収しており、全てがわかったときには何だそんなことで!という感じでした。

 

それにしてもキャスティングが本当に素晴らしいんですよね。主人公の城野美姫を演じた井上真央さんは、美しい顔立ちながら野暮ったくて地味な役を完璧にこなしていましたし、赤星を演じた綾野剛さんはボンクラの役が本当にピッタリなんです。そして1番素晴らしかったのがやはり典子役を演じた菜々緒さんです。

ファーストクラスでも名演技を見せていただきましたが、性悪な女の役をやらせたらもはや彼女が1番なのではないでしょうか?その美貌ゆえに出来る役柄であるので、決してけなしているわけではありません。典子は彼女のために用意されたような役だなと感じました。

 

典子に様々な嫌がらせをされながらも、健気に耐えていた美姫。対照的に自分の立場を守るためだけに典子殺害を計画し、平然と美姫に罪をなすりつけた里沙子。会社をクビになったら困るから殺した、という里沙子の発言にはこの人はサイコパスなのでは?と思うくらいゾッとしました。

 

これからぜひ原作のほうも読んでみたいと思います!

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